2歳児に鼻かみを教える方法
2歳児に鼻かみを教える方法が上手くできたので報告します。
結論から言うと、ティッシュを丸めたものを鼻に入れ、それを飛ばす遊びを通して鼻かみの感覚を掴んでもらう、というものです。
だいぶ前ですが、テレビで見た保育士さんがやってた方法で、なるほどなー、と思っていたのですが、試してみました。
応用行動分析の視点から自分なりにいくつか細かいコツがあるなと思ったので、そちらは下の方に詳しく解説します。
うちの次女(2歳になったばかり)は保育園に行ってますが、当然風邪をひきます。
で、鼻水垂らすと必発なのが急性中耳炎です。
中耳炎になると抗生剤を飲むことになるので、だいたい風邪自体も一時的には治ります。
あ、ちなみに抗生剤の不適切な処方が近年問題視されています。ウイルスが原因の風邪にはもちろん抗生剤は無効なわけですが、中耳炎を引き起こすのはほとんどが細菌なんだそうです。だから治療には抗生剤が必要になるんですね。もちろん適正な薬剤の選択が必要で、広範囲をカバーする抗生剤ばかりを使うと耐性菌の問題が生じるってことですよね。
話し戻りますが、抗生剤で風邪治ってるうちはなかなか免疫力上がらない感じがするんですよね。感覚的なものですかね?
長女も1歳~4歳くらいまでは風邪ひきっぱなしの日々だったけど、中耳炎にならずに抗生剤無しで、時間かかってもカルボシステインと抗アレルギー剤だけで治すごとに、その後風邪ひかない時間が長くなっていった感じがします。データを取ってないのでなんとも言えませんが・・・。
このGW、次女は鼻水と咳がひどく、微熱も出始め、「耳痛ーい」との訴え、こりゃまた中耳炎だな、と思ってたので休み明けに早速耳鼻科行ったのですが、思いのほか鼓膜の腫れは無し。確かに熱も下がっていました。
いつもなら当然のように中耳炎にかかってたのですが、抗生剤治療を回避できたのは最近になって鼻かみをマスターしたからかもしれません。
いつかテレビで見た保育士さんがやってた方法で、試したらすぐにマスターできたのできました。
ということで、2歳児に鼻かみを教える方法について報告してみます。
大まかに言うと、ティッシュを丸めたものを鼻に入れ、それを飛ばす遊びを通して鼻かみの感覚を掴んでもらう、という感じです。
細かなコツも含めて工程を解説します。
①ティッシュを丸めたものを鼻から飛ばす遊びを大人が楽しそうにやってみせ、「わ~!きたない~!!」などと煽る。「せーの!、フン!!」という合言葉も言う(モデリング)。
②子供もやってみたそうにしたら、やらせる。その際、わずかな鼻息でもティッシュが飛ぶ(鼻から落ちる)ように、ティッシュはふわっとまるめ、あまり鼻に詰めすぎない。鼻水がついていると「フン!!」してもくっつきやすいので特に注意。「せーの!」という合図で「フン!!」と言わせるようにします。ティッシュが飛んだら(鼻から落ちたら)すかさず「きたないー!!」などと一緒に喜んで強化する。
③同じように「せーの!」「フン!!」でティッシュを飛ばしては喜ぶという遊びを繰り返しますが、徐々に鼻に詰めるキツさを強め、強い鼻息でティッシュを飛ばせるようにしていく(シェイピング)。「せーの!」と言ってから「フン!!」をさせるようにして、「せーの!」という刺激に「フン!!」と反応する行動を強化(刺激性制御)。
④「せーの!」「フン!!」の遊びをした直後、次は「鼻フンするよ~」と説明し、ティッシュで片方の鼻穴をふさいであげながら「せーの!」と合図する。上手く「フン!!」ができたら、わずかでもティッシュについた鼻水を見せて「わー!、すごい~!鼻水出たね~!」などと煽って強化する。
⑤数日のあいだ、④を繰り返すことで、徐々に鼻がスッキリする感覚がわかってくると、鼻をかめるようになるかと思います(鼻のスッキリ感が強化子になる)。
ジムニー(JB23)ベースキャリア(TERZO)取り付け
GWは県内から出ることもなく、ほぼ自宅周辺で過ごしました。
で、奥さんからの提案で、お互いに半日程度の休み(子供からの解放)をもたらすということになりました。一方が子供2人を引き受け、その間一方が自由時間を得るということですね。
と言っても私はこれと言ってやりたいこと、行きたい場所もあるわけでなし、思い立ったのはジムニーへのキャリア取り付け作業をすることでした。
TERZO製ベースキャリアとルーフキャリアを一年以上前に買っていたのですが、まとまった時間が無いと取り付けられないなぁ、と思って放置していました。
本来は締め付け作業は2人でやると説明書に書いてあるし、時間に余裕が無いとちょっと難しそうだな思ってたんですね。
私のジムニーは現行型ではないです。2016年に買ったJB23の最終型です。
キャリアはTHULEなんかかっこいいですよね、でも高い。ということで純正オプションと同じTERZOにしました。
子供が1人の時は少しの荷物を積んでデイキャンプくらいは行けたのですが、子供2人だとなかなか荷物積めないだろうから、ということでキャリアを買いました。
でも、お出かけ自体しないので、ずっと付けないままで来ていました。
作業してみると、やっぱり微調整に時間がかかりました。
フットの締め付け作業に手間取るかなと思っていたのですが、その前にベースバーをフットに取り付ける作業の方が難しかったですね。
説明書通りの位置に取り付けるとルーフに乗せた時にフットが浮き上がっちゃうんですね。
ベースバーが左右にはみ出す長さを説明書記載よりも2~3ミリ長くすることでフットが浮き上がらなくなりました。この調整に苦戦。
説明書に「必ず二人で作業してください」と書いてあり、心配だったフットの締め付け作業は特に問題なし。ただ、左右のボルトを少しずつ均等に締め付けるために、行ったり来たりを何回もしなきゃいけなかったですが。
ここで事前に買っておいて正解だった道具がこちら。トルクレンチです。
この作業のためにわざわざ買うかどうか悩んでいたのですが、やっぱりあってよかった。
普通の六角レンチで締め付けトルクを意識するには何回回したとか数えなきゃいけないと思うんですが、そういうめんどくささが無いのでかなりストレスフリーでした。
ということで、ちょっとしたデイキャンプくらい今年は行けるといいですが。
明日から仕事ですね。
でも次女が鼻水たらしから「耳痛い」とか言っているのでおそらくいつもの中耳炎。まず耳鼻科連れて行かなきゃですね。
精神疾患は病気か
精神医学は病気をでっちあげていて、本来は病気じゃない人を薬漬けにしている、人権侵害をしている、みたいな批判をする反精神医学の運動があります。はてなブログでも運動をしている人たちがいます。
私はけっこうそういうのを見聞きするのが好きです。
日本で反精神医学と言えばこの方です。米田倫康さんの著書が出た時は真っ先に買いました。米田さんのブログのファンだったのですが、今は終了しているようです。
こちらは製薬会社による販路拡大戦略や精神医学の専門家による善意の暴走が世界の国々に及ぼすインパクトについて書かれています。
ジャーナリストによるもので、読みやすい、面白い、一気に読みました。
そして、DSM4の編集委員長が「DSM5はまじでヤバいから!」と警告しているのがこちら。やはり製薬会社が世界の精神医学のスタンダードに影響している状況、人間として正常な苦悩が治療対象とされることの危険性について書かれています。
上記のクレイジー・ライク・アメリカで日本のうつ病バブルの立役者として紹介されている大野裕先生が訳者、っていうところがまた面白いです。
精神医学が炎上するのは、精神疾患が生物学的な側面だけで捉えることができないからです。できない部分を「こころ」って言うわけですが、その評価における信頼性、妥当性はかなり低いわけです。少なくとも血液データやMRIよりは絶対に低い。低いことが悪いわけじゃなく、低いことを認めたがらないことが悪いと私は思います。
だから医者が変われば診断も変わったり、治療方針も全く違ったりしてしまいます。患者さんが医者を選べれば良いですが、救急で入院すると選べないし、本当に当たった医者の違いで患者さんのその後の人生って変わるよな、と思います。
この精神医学の曖昧な部分についてどう理解すればいいのか、比較的わかりやすく解説してくれるのが、聖マリアンナ医科大学の古茶大樹先生です。
以下、古茶先生の解説と私なりの理解です。
まず、精神疾患には疾患的なものとそうでないものがある、そういう前提だとしています。例えば、画像で脳委縮が認められる認知症、内分泌疾患や膠原病を背景とした症状精神病などは明らかに疾患と言えますが、適応障害やパーソナリティ障害、社交不安障害は疾患か、と問われればその証拠は示せません。少なくとも、身体疾患と同じ生物学的な水準では示せないことは明らかです。
しかし、疾患と言い切れないものだとしても、そこに当事者の苦しみなり、困っていることがある。その苦しみに対して何らかの支援はした方がいいわけで(それを医療と呼ぶかどうかは別として)、現状ではそれを保険診療でもやっていいと認められています。
では、統合失調症はどうでしょう。統合失調症は疾患か、と問われれば、精神科に携わる人のほとんどが、間違いなく疾患だと言うはずです。
しかし、統合失調症も身体疾患と同じレベルで、確かに疾患だと言い切れる証拠があるかと言えば、はっきりとは示せないのが現状です。画像に写るわけでも、バイオマーカーが特性されているわけでもありません。薬物療法の効果があるので、何らかの生物学的な基盤があることは想定できるけども、それはあくまで想定の話です。精神科における代表的な疾患と思われる統合失調症も、身体疾患と同じレベルの証拠をもって疾患だと言えるわけではありません。
でも、明らかに統合失調症は疾患だと直感的に思えるのはなぜでしょう。
それは、幻覚や妄想の訴え、さらにそれに影響された行動それ自体が健常者では観察されない異常を含んでいるからです。健常者が思い浮かべて、追体験することができないという了解不能性が統合失調症が疾患である根拠とされています。
精神医学における疾患は、一部は身体疾患と同じ水準の証拠に基づくけども、それに当てはまらない場合は精神医学に固有の判断基準である了解不能性に基づいています。
でも了解不能性が疾患の根拠というのはやっぱりとても弱いし、患者さんからしても納得できないでしょうね。
ここは危険な部分なので古茶先生が特に強調していることがあります。
シュナイダーはこの了解不能性について別な切り口の表現として「生活発展の意味連続性の切断」と言っているそうです。精神病によってその人らしさの連続性が失われるということです。その人らしさとはどのようなものだったか詳細に聞かないと判断できないということですよね。
また、患者さんの訴えを了解可能かどうか判断できるまで聴くことは簡単ではないということです。「あなたの立場だったら確かにそう考えるでしょうね」という風になるまで話を聴いて共感できるまでには技術が必要です。
そして、その過程、患者さんの話をよく聞いて、共感する(正確に理解する)過程が副次的に患者さんを癒すことになるんだ、そう仰っています。
長くなったのでもう一度まとめると。
・精神疾患には疾患的なものとそうでないものがある
・統合失調症でさえ、身体疾患と同じ生物学的な水準で確かに疾患と言える根拠はない
・精神医学固有の疾患の判断基準として「了解不能性」「生活発展の意味連続性の切断」がある
・「了解不能性」を判断するのは簡単なことではなく、患者さんの話を聴く技術が必要だが、共感(正確な理解)は患者さんに癒しをもたらす
文献:古茶大樹(2021)「標準的精神科医がしっておくべき精神病理学」精神科治療学36(2);p145-150.
心理教育のコツ~自尊心を育む・正確な情報提供~
Adherence Therapyのマニュアルを少しずつ読むシリーズです。
PROCESS SKILLS
- Working collaboratively
- Set a clear agenda
- Emphasise personal choice and responsibility
- Enhanced self-efficacy
- Build self-esteem
- Safety
今日はBuild self-esteemとSafetyをやっつけてしまします。
これ、6つ挙げなきゃいけないから無理やり付け足したのかな?
まず、Build self-esteemですが、直訳しても何言ってるのかよくわからないですね。
「健康維持のために薬を服用することの重要性は、自尊心の低さによって損なわれることがある。自尊心を高めることが、投薬の個人的な関連性を高めるために必要になることがある。自尊心の低さと無力感は、自己効力感の低さの根底にある。正確な共感と特定の目標に向かって小さなステップを踏むことは、患者の自尊心を育み、サポートするのに役立つかもしれない。」
よくわからないですね。飛ばしちゃいます。すいません。
次はSafety。
こちらも直訳で。
「このアプローチの目的は、患者が自分の治療について十分な情報に基づき、意思決定できるようにすることである。例えば、うつ病の患者が投薬を中止したり、糖尿病の患者がインスリンを中止したりと、人々は安全でない、生命を脅かすような決断をすることもある。専門家は正確な情報を提供する責任があります。」
Adherence Therapyの元になっている動機づけ面接は直面化や説得をやめて、聞き返しや是認や自律性の強調などに置き換える方法です。
情報提供をすることは説得のニュアンスを帯びるので、少し動機づけ面接を知っている人は、専門家として情報提供をすることを躊躇してしまうことがあるかもしれません。
しかし、ここで言う治療者、面接者の人はその道の専門家なので、患者さんの利益になる情報、不利益を避けるために必要な情報は躊躇なく提供しなくてはなりません。
重要なのは押しつけがましくない態度で正確な情報提供を行う方法ということになります。
次回の同じシリーズの中で紹介することになるかもしれません。
子育てとTSD法
当たり前のことですが、小さい子供は病院での処置を嫌がります。
侵襲性があり、痛い処置はなおさらです。
しかし、中には別に痛くもないんだけど、「何かされる!」っていうだけで拒否反応を起こしてしまう場合もあります。
子供になんらかの医療的処置を施す時に、特に小児歯科の領域でTSD法と呼ばれるテクニックで対応することがあるようです。
T…Tell:どんな処置をするのか、なぜそれをするのかなど言葉で説明。
S…Show:使う器具などを見せる。
D…Do:実際にやって見せる。
頭に入れておけば、歯科に限らずいろんな場面で使える方法だと思います。
応用行動分析の言葉で言えば、Tellは丁寧に教示をすることです。
子供の理解力って軽視しないほうがいいですよね。1歳~2歳くらいの子供を育てたことある人はわかると思いますが、彼らはうまく話すことはできなくても、こちらの言っていることは結構理解しています。
私の専門ではありませんが、知的障害やコミュニケーションに障害のある子供でも、「どうせ言ってもわからないだろう」ではなく、ちゃんと説明してあげることが大事だと思います。
ShowやDoは脱感作していく過程と言えそうです。
加えて、何か好きなものを一緒に提示する拮抗条件づけなども使うとよりスムーズ化もしれません。パパやママがそばについて声かけしたり、満を持してスマホの動画を見せたりしてもいいかもしれません。
あるいは、どうやったら安心して処置を受けられるか、子供自身にアイデアをたずねるのも良いと思います。
今日は長女の耳鼻科受診でした。
うちの長女(6歳になったばかりの年長さん)は滲出性中耳炎という病気で1歳の時から耳鼻科に通っています。鼓膜換気チューブというものを留置する手術も3回繰り返しています。
1か月前の定期受診では、留置していたチューブが脱落し、外耳道に落ちていたので取り出してしまおうということになったのですが・・・。長女、恐がって断固拒否。
前にもこんなことありました。
ということで、今日の受診では処置が受けられるようにやったことがTSD法でした。
まずはTell。耳の中の構造がどうなっているか、チューブがどこに落ちているかなどを図を描いて説明&家にあったピンセットと小物を使って処置のイメージを再現。長女「なーんだ!、ぜんぜんお耳洗うじゃないじゃん!」とのこと。何されるか分かってなかったみたいですね。確かに3歳くらいの時に無理やり抑えて、泣きながら耳洗浄されてたので、同じことされるんじゃないかと思ってたようです。
次にShowとDoこれも家にあった小物を使って練習しました。外耳に筒状の器具をあてがい、耳の中がカチャカチャする感じを再現しました。今日は診察室の中でも先生が使う道具をゆっくり見せてくれていました(今日は先生も余裕があった様子)。
大好きな鳥の本を持っていたので、処置の最中に気に入っているページを開いて見せようとしたところ、長女「笑って動いちゃうからダメ」とのこと、よくわかってますね。
いざとなると少し怖気づいていましたが、頑張って動かないようにしてくれ、無事チューブが取り出せました。
とりあえずうまくいってよかった。
「チューブ取ったよ、ぜんぜん痛くなかった!」と会う人にいちいち自慢。取れたチューブは今日の成果として家に持ち帰り、ママに見せていました。
子育てと応用行動分析
我々OTやいろいろな対人援助職の人々は、日頃、仕事で使う知識や技術を子育てにも使おうとすることがあると思います。
でもあまりうまくいかないことは多いですよね。
やっぱり家族だと感情が先走っちゃうからでしょうか。
そんな中で、成果を上げた介入もあったので報告します。1年前の緊急事態宣言で自粛していた時期のこと、当時まだ1歳になったばかりの次女が食事やおやつの度にお茶をぶちまけることが問題になっていました・・・。
以下、事例報告風に。
<目的>頻繁にお茶をこぼす健常な1歳女児に対し、タイムアウト(注1)手続きを用いたところ、お茶こぼし行動が消失したため報告する。
<方法>ベースライン期(注2)では1日3~4回、食事やおやつの時間にお茶をこぼした。行動観察より、お茶こぼしには感覚遊びの機能があるものと推定した。介入期にはお茶をこぼしたらすぐにその場から離し、拭き終えるまでのおよそ1分程度タイムアウトする随伴性(注3)を導入した。
<結果>タイムアウト導入後速やかにお茶こぼし行動は消失した。day9~11で復帰(注4)がみられたが、その後再び消失した。
<考察>行動の機能推定(注5)が妥当であり、タイムアウト手続きが有効だった。
注1 タイムアウト:ある行動の直後、本人が好んでいるものに接触することを禁止することで、その行動の頻度を減少させる手続き。
注2 ベースライン期:介入を行わないで行動を測定する期間。
注3 随伴性:個体の行動と環境の関連性。
注4 復帰:弱化された行動が再び出現すること。
注5 機能推定:ある行動が果たしている機能を推測すること。行動の機能は要求、逃避、注目、自己刺激、の4つ。
しかし、行動分析学の専門用語は多いし、難しいし、混乱しやすいですね。専門家でも用語の使い方や解釈が微妙に違うことが多いです。学会などでも気軽に議論しづらいな、と思います。
今回は問題行動を低減するために弱化の手続きを用いています。大声で叱るとか体罰のような嫌悪刺激を提示する方法ではありませんが、タイムアウトも子供にとっては嫌悪的だと思います。
弱化の手続きを用いる前に、
・環境調整(問題行動が起こりにくい設定に変える)
・分化強化(問題行動以外の行動を強化する)
・消去(問題行動の強化子を除去する)
などの方法をまずは検討し、どうしても効果が得られない場合に限って弱化を使うようにしなければなりません。
心理教育のコツ~自信を高める~
Adherence Therapyのマニュアルを少しずつ読むシリーズです。
PROCESS SKILLS
- Working collaboratively
- Set a clear agenda
- Emphasise personal choice and responsibility
- Enhanced self-efficacy
- Build self-esteem
- Safety
今日はEnhanced self-efficacyです。薬をきちんと飲む自信度に関する項目になります。
まずは直訳、
「ここでいう自己効力感は薬を効果的に服用し、病気にうまく対処できるという患者自身の自信です。服薬に対する患者の自己効力感を高めることで、服薬アドヒアランスを高めることができます。このアプローチは、患者さんが有用なスキルを身につけられるように、実践的で実用的な方法をとることで自己効力感を向上させることを目的としています。現実的な小さな目標を設定し、成功体験を積んだり、過去の成功を振り返ることで効果を高めていきます。」
従来からの教育的アプローチは、薬を飲む必要性を教える、理解させるといったこと目的にしていますが、教育的な要素しかないプログラムに統合失調症の服薬アドヒアランスを向上する効果は無いと結論されています。
研究によってある程度支持されているのは、動機づけ面接の技法を応用したプログラムのほか、飲み忘れを防ぐリマインダーや服薬のきっかけ(Cue)の設定、強化随伴性を設計といった行動的なコンポーネンツを併せ持ったプログラムです。
薬を飲む理由や重要性だけでなく、具体的な方法や自信度という側面もフォローする必要がありそうです。
薬を忘れずに飲む方法としては、家族や訪問看護のスタッフにも確認してもらうという方法があります。患者さんの受け入れが良ければいいですが、中には確認されるのはわずらわしい、監視されているようで嫌だ、という人もいます。
その点、持効性注射剤(LAI)の導入によって「家族から確認されなくなってラクになった」と言う話はいくつか聞いたことがあります。
スタッフ側からよく提案するのは、服薬カレンダーの設置です。目に入るので気が付きやすいし、訪問看護のスタッフもいちいち「飲んでますか?」って聞かなくても服薬確認できるので良い、という場合もあるようです。ただ、しっくりこない、なんか使いたくないという患者さんもいます。
調べてないのでわかりませんが、服薬管理をするスマホアプリなんかもあるでしょうから、使える患者さんには良いかもしれません。
いずれにしてもこれらの方法はスタッフ側から一方的に提案するのではなく、まずは患者さんにアイデアを聞いたり、これまで上手くできていた方法をたずねることが協働的な進め方だと言えます。
次に、自信を高めるコミュニケーションとはどのようなものでしょうか。
繰り返しになりますが、まずは患者さん自身の成功体験、うまくやれていた時はどのような方法だったのかなどをたずねます。そして、出てきたものについてさらに詳しく聞いて具体的にしたり、是認(良いところを認める発言をする)することもできます。
自信度に関して尺度化の質問を用いて引き出すのも有効な方法だと思います。こちらは過去記事にもあります。尺度化の質問は単なるアセスメントで終わらせるのはもったいない方法です。
次にスタッフから見た患者さんの強み、できているところについて言及してもよいと思います。
精神科病棟の看護師さんがよく注目するのは頓服薬の使い方です。自分から頓服薬を飲みたいと希望する患者さんには「対処行動ができている」と高評価だったりします。
あまり話を聞かずに二言目には頓服を勧めるというのはいかがなものか、と思いますが、患者さんがご自身の体調変化に気づき、自己コントロールしようとする姿勢を育むのは大切なことでしょうから、その点をしっかりフィードバックし是認していくのは大事かもしれません。
また、入院中は服薬の自己管理を指導するのも看護師さんの重要な役割だと思います。ここでのコミュニケーションが協働的なものになるだけで患者さんの服薬アドヒアランスは高まるんじゃないかな、と思います。
服薬に限らず、不調を感じた際に早めに受診するとか、相談をするといった行動クラスも強化したいものです。
「ご自身の体調変化に気づいたんですね」
「早めに相談してくれてありがとうございます」
「体調管理への意識が高いですね」
などと言っていけるといいかもしれないです。
このように、服薬アドヒアランスについて、方法や自信という側面から見た場合、病気の自己コントロールやセルフマネジメントといった要素と絡めて考えていけるといいのかもしれません。
こうして書いてみると、特段めずらしい内容ではなく、精神科のスタッフはごく自然にやっていることなのかもしれません。
ただ、こと「心理教育」と言うと、一方的な説明やアドバイス、教育的指導に終始してしまうことが多くなりがちなので、片手落ちにならないようにしたいところです。