精神科OTのブログ(仮)

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精神科の作業療法士が知見や考えをシェアしています。

患者コミュニケーション

心理教育のコツ~抵抗を扱う~

Adherence Therapyのマニュアルを読み進めています。 Cornerstones of the adherence approach Exchanging information Dealing with resistance Dealing with resistanceをみてみます。 まずは直訳。 抵抗は、薬についての緊張や意見の相違があるときに生じ…

アルコール使用障害の人が「飲んでません」と言った時にどう対応するか

アルコール使用障害の患者さんが「酒飲んでません」と言ったら、返す言葉は「辛くないですか?」です。これ、河本泰信先生が紹介している方法で、私はいつも意識して使っています。 アルコール使用障害、中でもDSM-Ⅳまでの診断では依存症とされるような比較…

病識を持たせる方法はあるのか

そもそも病識の有無を患者さんの発言から単純に「ある」「なし」のように判定するものでもないです。 ioriiba.hatenablog.com そして、患者さんに病識を持ってもらうということが、本当に必要なことなのか、病識を押し付けることへの疑問も持ったほうがいい…

病識はある方が良いのか

精神科医療では患者さんに病識を求めがちです。 患者さんにご自身の病気について正しく理解してもらい、マネジメントに努めてほしいと願うのは当然のことです。しかし、患者さんが病識を持たないことにも意味があるのかもしれません。 Lysaker(2018)は統合…

病識に影響する要素とは

過去記事にて、精神疾患、特に統合失調症における病識とは何かについて確認しました。 ioriiba.hatenablog.com 自身の何らかの変化が精神疾患に基づくと考える 精神科の治療を受け入れる 精神症状を認識できる 我々が一般的に病識と言っているものは、これら…

心理教育のコツ~情報を交換する~

Adherence Therapyのマニュアルを少しずつ読んでいます。 Cornerstones of the adherence approach Exchanging information Dealing with resistance 今日はExchanging informationを見てみます。 まずは直訳。 「セッション中ことあるごとに患者の理解を確…

精神疾患の”病識”とは

あの患者さんは「病識がある」、とか「病識が無い」とかよく言われます。 「病識まではいかないけど、病感くらいはありそう」などと言うこともあります。 統合失調症が代表する内因性精神病のコントロールには治療アドヒアランスが重要な要素ですが、ここに…

心理教育のコツ~自尊心を育む・正確な情報提供~

Adherence Therapyのマニュアルを少しずつ読むシリーズです。 PROCESS SKILLS Working collaboratively Set a clear agenda Emphasise personal choice and responsibility Enhanced self-efficacy Build self-esteem Safety 今日はBuild self-esteemとSafet…

心理教育のコツ~自信を高める~

Adherence Therapyのマニュアルを少しずつ読むシリーズです。 PROCESS SKILLS Working collaboratively Set a clear agenda Emphasise personal choice and responsibility Enhanced self-efficacy Build self-esteem Safety 今日はEnhanced self-efficacyで…

ロジャーズによる面談の方向付け

今日も職場で動機づけ面接(MI)勉強会やりました。 今日の話題はチェンジトーク(変化に向かう言葉)の認識です。 しかし、チェンジトークと言うからには、目標となる変化、”標的行動”が必要になります。的が無ければ、正しい軌道がわかりません。標的行動…

聞き返しの強弱

今日も職場で動機づけ面接勉強会がありました。 今日のテーマは聞き返しの強弱でした。 強弱ってなんだよ、って感じですが、ざっくり言うと、クライエントの言ったことをぼかし、程度を下げて伝え返すのが弱めの聞き返し。逆にクライエントの言ったことを増…

尺度化の質問

先日、職場での動機づけ面接勉強会がありました。 内容は「引き出す質問」と「リアルプレイ」。 引き出す質問とはチェンジトーク(特定の行動変容に向かう発言)しか答えられない質問のことです。 引き出す質問→聞き返し→聞き返し→引き出す質問→聞き返し→聞…

心理教育のコツ~自律性の強調~

Adherence Therapyのマニュアルを見ていくシリーズです。 PROCESS SKILLS Working collaboratively Set a clear agenda Emphasise personal choice and responsibility Enhanced self-efficacy Build self-esteem Safety 今日はEmphasise personal choice an…

アルコール使用障害の患者さんが「今のところ飲んでません」と言ったらどう反応するか

アルコール使用障害の患者さんが「今のところ飲んでません」と言ったら、どのように反応して言葉を返しますか? ”すごい!飲んでないんだ!”・・・? ”えらい!頑張ってる!”・・・? もちろん絶対に正しい答えも間違った答えもありません。 患者さんは相反…

「失踪日記」を読んでアルコール使用障害について考えた

私はあまり漫画を読みませんし、詳しくないですが、こちらの漫画が面白いと聞いたので読んでみました。 吾妻ひでおさんは、作品を生み出し続けるプレッシャーから突然失踪し、ホームレス生活を送った経験を持つ異色の漫画家だそうです。 また、重度のアルコ…

心理教育のコツ~テーマ設定~

Adherence Therapyのマニュアルを見ていくシリーズです。 PROCESS SKILLS Working collaboratively Set a clear agenda Emphasise personal choice and responsibility Enhanced self-efficacy Build self-esteem Safety 今日はSet a clear agendaについて。…

心理教育のコツ~患者さんと協働する~

Adherence Therapyのマニュアルを見ていくシリーズです。 Inter Personal Skillsは終わったので、次はProcess Skillsに取り掛かります。 PROCESS SKILLS Working collaboratively Set a clear agenda Emphasise personal choice and responsibility Enhanced…

両面の聞き返し

今日の動機づけ面接(MI)勉強会では「両面の聞き返し」を取り上げました。 両面の聞き返しとはクライエントの両価性の両方(維持トークとチェンジトーク)を並列して伝え返すものです。 CL:「やめなきゃいけないのはわかってるけど、家に帰ったら飲んでし…

薬どのくらい余ってますか?

精神科では患者さんが薬を飲まなくなって再発するケースが多いので、スタッフは患者さんがちゃんと薬を飲んでいるかどうか確認することがあります。 1つはそれとなく確認する方法です。 昼薬がある人はデイケアで薬を飲めているか観察することがあります。 …

患者さんからフィードバックを受ける

Adherence Therapyの中核スキルとしてElicit and respond to feedbackを紹介してみました。 ioriiba.hatenablog.com これと非常に似ていて、ほとんど同じなのかなと思ったけど、やっぱり微妙に違うものを見つけたので紹介します。 2000年代初頭から、心理療…

心理教育のコツ~患者さんからのフィードバック~

Adherence Therapyのマニュアルを見ていくシリーズです。久しぶりです。 というのも、今日のテーマは私自身があまり噛み砕けなかったので勉強が必要でした。 INTERPERSONAL SKILLS Use the patient's words Open ended questions Reflective listening Summa…

聞き返しを身につけて良かったこと

動機づけ面接の中核的な技法である聞き返しですが、練習し始めた時はとても難しく感じました。 でも、身につけて良かったことがあります。 患者さんや同僚と話す機会がある度に聞き返しの練習をしていたのですが、けっこう不自然で変なしゃべり方になってい…

動機づけ面接の存在価値は何か

動機づけ面接の話題で連投になりそうですが、今はそれが楽しいから良いかなと思っています。 今日は同僚にわからないことを質問したり、対話する時間を持ちました。 力動的精神療法と精神分析がどう違うのか質問したり、患者さんとの「関係性」という言葉を…

「解釈」と「聞き返し」

今日も楽しい動機づけ面接ミニ勉強会でした。 今日のテーマは中核技術の聞き返しでした。 動機づけ面接第3版の中には、「聞き返しの技能は力動的精神療法における解釈のタイミングと似ていないこともない」とあります。 私はこの種の心理療法について何もわ…

最近の楽しみ

先日、職場内での動機づけ面接ミニ勉強会の日でした。 私にとってはトレーナーとしての経験を積むためのチャンスでもあり、毎回、準備段階からとても楽しみにしています。 集まってくれるのは皆ベテランの同僚の人たち、貴重な時間をどう有効に使うかいつも…

アルコール使用障害の方への話題選び

アルコール使用障害の方に来ていただくグループを同僚とともに担当しています。 私が担当しているグループは心理教育でもなく、認知行動療法でもなく、言いっぱなし聞きっぱなしでもないものです。 強いて言えばグループ動機づけ面接の要素を少し取り入れて…

間違い指摘反射を抑える方法

今日は動機づけ面接のミニ勉強会がありました。 動機づけ面接を勉強したい、担当の患者さんへの対応に動機づけ面接を使いたい、という同僚の人たち数名とエクササイズやロールプレイ、リアルプレイ、ディスカッションを行っています。毎回、本当にいろいろな…

心理教育のコツ~サマライズ~

Adherence Therapyのマニュアル解説シリーズです。 INTERPERSONAL SKILLS Use the patient's words Open ended questions Reflective listening Summarising Elicit and respond to feedback 今日はSummarisingについて。 サマライズ、つまり患者さんが言っ…

怒りを向けられた時の応答2つ

もちろん病状のせいなのですが、精神科の患者さんというのは怒りっぽくなったり、イライラしやすくなったりする時がありますよね。 患者さんに怒りを表出されたとき、攻撃性を向けられた時の対応について、すべてではないし、正しいとは限りませんが、私がや…

教えるだけの心理教育はなぜ効果が無いか

教える、情報提供するだけの心理教育には、統合失調症の服薬アドヒアランスを向上する効果はないとされています。 ioriiba.hatenablog.com それはなぜなのか。 本来は中立であるべき情報提供が、患者さんを良い方向に導きたいという専門家の気持ちによって説…