精神科OTのブログ(仮)

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精神科の作業療法士が知見や考えをシェアしています。

説得にならない情報提供の仕方

「薬を飲んだほうがいいでしょう」

「酒をやめたほうがいいえしょう」

「子供に怒らないほうがいいでしょう」

 

書いてあるだけなら情報提供です。

でも、人に言われると説得になり、両価性の一方の肩を持たれると逆方向に行きたくなる、反発したくなる。

 

そのような現象を起こりにくくする方法を解説します。

 

動機づけ面接を開発したミラーは、かつて問題飲酒者への減酒支援についてどのようなアプローチが有効かを確認するための臨床試験を行いました。

 

結果、10回以上のセッションを費やす個別のCBT群と減酒の方法が解説された本を手渡すだけの治療群では、効果に差が無いことを見出しました。

 

もちろん、本よりも治療成績の良い治療者もいますが、本と同等か、本よりも治療成績の悪い治療者もいたのです。

 

この、本よりも治療成績の良い治療者の面接がどのように行われているのかを詳細に分析し、さらに洗練させたものが動機づけ面接です。

 

ただ、一応は訓練を受けているプロの治療者によるCBTよりも、本を渡すだけのほうが治療成績が良いというのはどういうことでしょう。

 

統合失調症の心理教育の話に移ります。

 

服薬アドヒアランスの向上には病識の獲得が重要だと考えて心理教育を実施する場合、患者さんに病気だと自覚させようという意識が働くでしょう。

 

例えば、統合失調症の症状をたくさん紹介して、どれが当てはまるかたずねるということをしますね。

 

患者さんは我々のねらいをよくわかっているのです。

 

本来、ご自身の体験を病気に帰結するかどうかは患者さん次第。

 

我々専門家は、ただ中立的に、客観的に情報提供することしかできないし、そうでなければ患者さんが本来できるはずの正しい自己理解のプロセスを邪魔することになるでしょう。

 

情報提供から説得のニュアンスをできるだけ省く方法は、

 

①許可を得る

「精神科の専門家として、あなたにアドバイスがあるのですが、話してもいいですか?」

 

②あなたに当てはまるかどうかわからないと伝える

統合失調症の主な症状についてお話しますね、もちろんあなたに当てはまるとはかぎりませんが」

 

③自律性を尊重する

「実際に飲むかどうかはあなたが決めることで、強制できることではありませんが、症状をコントロールするためには薬が必要だと思います」

 

私は、グループ心理教育のリーダーを行う際、②を強調した上で、逆にみなさんの体験や知恵をできるだけ教えてほしいとお願いしています。