聞き返しを身につけて良かったこと
動機づけ面接の中核的な技法である聞き返しですが、練習し始めた時はとても難しく感じました。
でも、身につけて良かったことがあります。
患者さんや同僚と話す機会がある度に聞き返しの練習をしていたのですが、けっこう不自然で変なしゃべり方になっていたと思います。
練習を重ねると、患者さんの発言の奥にあるもの、何を言いたいのか想像して返す、複雑な聞き返しが少しずつできてきました。
ある日、長期入院になっていた患者さんのケア会議がありました。
その患者さんの発言は、支離滅裂で、荒唐無稽で非現実的な将来の夢を語っているようでした。参加者は皆、「またその話か・・」とうなだれています。
Aさんの発言の断片を頭の中で集め、発言の背景を想像してみました。
「Aさんはこの先の生活、特に経済面を心配してるんですね、お父さんも年だし、自分の力で生活していかなきゃって思ってる、だから収入の手段が欲しいんですね、それで○○とか、△△とかやりたいって言ってるんですね」
なんだかこの聞き返しがとても当たったようで、「そうなんですよ!、あなたわかってますね!」って喜んでくれました。
それで、退院前訪問に行った時、Aさんはお父さんに私のことをこのように紹介してくれました。
「自分は精神障害者だから、自分の言いたいことをうまく言えないんだけど、~~さんは通訳してくれるんだよ、障がい者の通訳みたいな人なんだよ」
動機づけ面接の勉強をして、聞き返しを身につけて良かったな、と思える瞬間でした。
思路障害のある患者さんはA→B→C→Dと論理的に話すことが難しくなっています。
A→Dになったり、いきなりDだけ言ったりするため、支離滅裂とされてしまいます。
複雑な聞き返しの技術は抜けちゃっているBやCを補う役割を果たすため、重度の精神障害を持つ方とのコミュニケーションに役立つと考えます。