精神科OTのブログ(仮)

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精神科の作業療法士が知見や考えをシェアしています。

「失踪日記」を読んでアルコール使用障害について考えた

 

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私はあまり漫画を読みませんし、詳しくないですが、こちらの漫画が面白いと聞いたので読んでみました。

 

吾妻ひでおさんは、作品を生み出し続けるプレッシャーから突然失踪し、ホームレス生活を送った経験を持つ異色の漫画家だそうです。

 

また、重度のアルコール使用障害の当事者でもあり、その背景に気分障害が併存していたとされています。

 

さて、過酷なホームレス生活ですが、作品ではとても面白く表現されていてとにかく笑えるだけでなく、その生活ぶりが詳細に描かれていて興味深いです。

 

そして後半は、アルコール専門医療機関に入院し、アルコールリハビリテーションプログラム(ARP)を受けた経験が描かれています。

様々な患者さんが登場してきますが、私の印象に残ったのはN村さんという男性。看護師さんに「ミニラN村」とあだ名を付けられている彼は、

・「なかよくやりましょう!」と言って自分が持っている食べ物などととにかく人にあげてしまい、何も無くなると自分のおかずまで人にあげる

・グループミーティングでは必ず「これからは1から10までやり直して真人間になります!」と同じセリフを言う

という方。

 

ある日外出許可が出たN村さんは抗酒薬を服用しているにも関わらずワンカップ15本を一気飲みして救急車で病院に戻ってきます。

 

なんだかこのN村さんにアルコール使用障害の方の悲しさが詰まっている感じがして、笑えると同時に切ない気持ちになりました。

 

人に気を遣い続ける生き方。本音を話すこともできない。

 

そんな辛さから一時的に逃避する手段がN村さんには飲酒しかないのです。

 

~酒は人生という手術を耐えさせてくれる麻酔薬だ~ ジョージ・バーナード・ショー

 

 

 

数年前に久里浜医療センターの研修に行かせてもらった時に聞いた病棟師長さんのお話を思い出しました。

 

退院前のミーティングで「酒をやめる」と宣言した方がすぐに再入院してくることもあれば、「俺は酒を飲む!」と宣言していった患者さんが断酒を続けていることもあるそうです。

 

酒をやめるという言葉よりも、本音や正直な気持ちを自由に表明できることの方が大事なのでしょうね。

 

そのために支援者としてはどんな関わり方ができるか、どんな環境づくりができるか、考えていかねばなりません。

 

 

はてなブログにはアルコール使用障害の当事者の方の記事も多くありますし、どこかで交流させていただき、勉強させてもらいたいな、とも思っています。

 

 

失踪日記の続編である、「失踪日記2アル中病棟」もこれから読むのが楽しみです。

 

 

ioriiba.hatenablog.com