精神科OTのブログ(仮)

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精神科の作業療法士が知見や考えをシェアしています。

アルコール量のグラム表記

飲料メーカー各社がアルコール飲料におけるアルコールのグラム表記を行っていく方針で検討しているようです。

 

news.yahoo.co.jp

 

アルコール飲料では通常、アルコール度数がパーセンテージで表記されています。

 

おそらく、これに加えてということだと思いますが、アルコール量のグラム表記もされるようになるようです。

 

適正な飲酒量というのは文化や人種によって違いますが、わが国では純アルコール20グラムとされています(女性や顔が赤くなる体質の人はその半分の10グラム)。また、40グラム以上では飲みすぎとされています。(30グラムだったらどうなんでしょう?)

 

また、アルコール量は「ドリンク」という単位で表現されることもあります。これは基準飲酒量とも呼ばれるもので、わが国では1ドリンク=10グラムと規定されています。(ちなみにアメリカは14グラムだそうな)

 

なので、男性なら2ドリンクまで、女性やフラッシャー(顔が赤くなる体質)の方は1ドリンクまでにしておくのが適正飲酒ということになります。

 

アルコール20グラム(2ドリンク)というのは、

ビール(5%)なら500㎖

チューハイ(7%)なら350㎖

日本酒(15%)なら180㎖(1合)

などです。

 

このように、酒の種類(アルコール度数)によって適正な飲酒量が変わってきます。

 

適正飲酒量が20グラム(2ドリンク)ということを知っていれば、手にしたパッケージのグラム表記を見て「ああ、これ一本にしといたほうがいいのかぁ」みたいなことがすぐわかるということですね。

 

ストロングだと350mlで余裕で適正越えちゃいますが…。

 

昨今、ストロング系アルコール飲料の有害性などがメディアでも指摘されるようになりました。国立精神神経医療研究センターの松本俊彦先生による問題提起が広くシェアされたことが記憶に新しいです(元はと言えば松本先生は他の方の意見をリツイートしただけらしいですが)。

 

また、それに応えるようにオリオンビールではストロング系飲料の販売停止を決めましたし、逆に健康に配慮したアルコール飲料として2%のチューハイが発売されるらしいです。

 

アルコールと健康に関する意識が全体として高まってきていることは確かのようです。

 

その背景にはDSM5におけるアルコール使用障害の概念がその裾野を広げたことがあるでしょう。

 

これまでの依存症概念はより重症な患者さんを指しており、治療についても断酒一択しかないとされていました。

 

対して、使用障害という概念は軽症から中等症の問題飲酒者の方も治療の対象とし、有害性の少ない飲み方に回帰する減酒という手段も選べるようになりました。(減酒補助薬を売る製薬メーカーが儲かるためでなければよいのですが・・・)

 

このような流れの中で広まっている問題飲酒のスクリーニングツールがAUDIT(Alcohol Use Disorders Identification Test)で、Web上でも簡単に自己チェックができます。

 

AUDITは10項目の質問に答える方法ですが、そのうち冒頭の3項目だけに答えればよいというAUDIT‐Cと呼ばれるより簡便な方法もあり、臨床上は有用かなと思います。

↓こちらはドリンク換算表も載っているので、自己チェックされてみてはいかがですか?

kurihama.hosp.go.jp

 

ただ、患者さんは実際の飲酒量を正直に言わないことが多いので、その辺の聞き方についてもまた紹介したいと思います。