聞き返しの強弱
今日も職場で動機づけ面接勉強会がありました。
今日のテーマは聞き返しの強弱でした。
強弱ってなんだよ、って感じですが、ざっくり言うと、クライエントの言ったことをぼかし、程度を下げて伝え返すのが弱めの聞き返し。逆にクライエントの言ったことを増幅させ、程度を上げて伝え返すのが強めの聞き返しです。
結論から言うとチェンジトークに対しては弱めに聞き返したほうがいいです。
Cl「体のことも気になるし、休肝日は作ったほうがいいかなと思うんです」
Th「健康のこととかお酒の飲み方とか、うっすら気になり始めた感じ」
Cl「うっすらっていうか、けっこう気になってますね、さすがに毎日飲んでる人って周りにはいないみたいだし、血液検査に引っかかったら恥ずかしいし」
「うっすら」「~な感じ」のような言葉で弱めに聞き返すと、クライエントは自分が言った言葉をより強く認識することになり、さらにチェンジトークを話す可能性があります。
ちなみにチェンジトークに対して強めに聞き返してしまうと、せっかくのチェンジトークがしぼんでしまったり、逆に維持トークを引き出してしまう可能性があります。
Cl「体のことも気になるし、休肝日は作ったほうがいいかなと思うんです」
Th「すばらしい!、大きな病気になる前に休肝日をしっかり設定しようと思っているのですね」
Cl「いや、さすがにまだ病気にはならないと思います、まだしばらくは大丈夫だと思いますけどね、休肝日って言っても、お酒飲めないのもストレスですからね」
勉強会の中でも話題になりましたが、面接者はクライエントからチェンジトークが出るとついうれしくなって、無意識のうちに強めに聞き返してしまう傾向があります。あるいは、さらにチェンジトークを増幅させようという気持ちで、つい強めに聞き返してしまう傾向にあります。
もう一つ、維持トークを減弱させるために強めの聞き返しが有効な場合があります。
Cl「休肝日って言っても、お酒飲めないのもストレスですからね」
Th「お酒飲まないとイライラして眠れなくなっちゃったり」
Cl「うーん、それは無いですけどね、むしろ飲まない方が睡眠の質は上がるんじゃないですか」
有効だからといって強めの聞き返しばかりを使うと雰囲気悪くなるので、ほどほどにしておいたほうが良いです。面接者のフラストレーションをぶつけるかのように強めの聞き返しばかり使ってはなりません。
ミラーは強めの聞き返しについて、維持トークを減弱させるテクニックというよりは、クライエントへの純粋な興味に基づいていると言っている、ということもどこかで聞いたことがあります。
動機づけ面接を習う人がテクニックに走り、来談者中心的なスピリットを忘れがちということで、近年はそれを修正するようなことを繰り返し言っているようですね。
ちなみに維持トークに弱めに聞き返すと、どうなるんでしょう。
Cl「休肝日って言っても、お酒飲めないのもストレスですからね」
Th「お酒飲めないのはちょっとストレスかもしれない」
Cl「いや、だいぶストレスですよ、だって飲むのが習慣ですからね」
精神科の患者さんは自身の精神病症状についてあまり多くを語ろうとしない傾向があります。幻覚妄想状態や躁状態におけるエピソードについては特にそうです。
で、少し語ってくれた時にそのまま聞き返したり、強めに聞き返したりしてしまうと、語りを止めてしまうことがあります。
Cl「お金を使っちゃったりね」
Th「あ~、お金使いすぎちゃったりしたんですね」
Cl「いや、してないけどね、必要なもの買っただけだから」
語りを続けて欲しかったら弱めのほうがいいかもしんないです。
Cl「お金を使っちゃったりね」
Th「少し使ったりもあったかも」
Cl「そうそう、車買っちゃってね、その時はハイになってて」
アルコール使用障害の患者さんが酒飲んでない時も弱めの聞き返しがいいと思う件は過去記事に書いています。
ioriiba.hatenablog.com