心理教育のコツ~情報を交換する~
Adherence Therapyのマニュアルを少しずつ読んでいます。
Cornerstones of the adherence approach
- Exchanging information
- Dealing with resistance
今日はExchanging informationを見てみます。
まずは直訳。
「セッション中ことあるごとに患者の理解を確認するべきです。 病気や治療法を知り、情報交換するプロセスにするべきです。患者さんに知っていることを聞くことで、情報を得ることができます。私たちは患者さんにもっと情報が欲しいかどうかを尋ねる必要があります。提供される情報は事実に基づいたものでなければなりません」
心理教育って情報提供することだと思われていることが多いと思います。しかし、情報提供は患者さんの知識を向上する効果はあっても、服薬アドヒアランスを改善する効果は無いのです。
薬を飲むのは患者さんの方なので、こちらが一方的にしゃべりまくっても意味がない。当時者たる患者さんに多くを語らせ、自分で考え、行動してもらう必要があります。
情報提供は不要なのではなく、やり方を変えればたちまち協働的なものになります。これをAdherence Therapyでは情報提供ではなく「情報交換」と表現しています。
動機づけ面接の言葉で言えばE-P-Eに基づく情報提供ということになります。
情報提供をしたいタイミングが来た時、①まずは患者さんに知っていることをたずね、②次に許可を得た上で情報提供を行い、③それを聞いてどう思うかたずねる、という手順です。
すでに知っていることを言われるのって「知っとるわ!」って頭にきますよね。だから先に患者さんに聞きます。患者さんは意外と正しいことを知っていますから、知っていたら「よくご存じですね!」と是認する機会にもなります。
また、情報提供は余計なお世話になる場合も多いものです。聞いてもいないのにアドバイスされると頭にきますよね。だから言ってもいいか許可を得ます。
情報を聞いて、患者さんが正しく理解しているかわからないし、理解したとしても、その情報に基づいて行動するかどうかは患者さんしだいです。だから、情報提供した後に、どう思うかたずねます。
もう一度確認すると、
Elicit(引き出す)・・・患者さんに知っていることをたずね
Provide(提供する)・・許可を得た上で情報提供を行い
Elicit(引き出す)・・・それを聞いてどう思うかたずねる
例えば、
Th<抗精神病薬を飲み続けるのは何のためかご存じですか?(Elicit)>
Pt「なんででしょう?、完全に治すためですか?」
Th<一般的に知られていることをお話しても良いですか?(許可を得る)。症状を抑えるという目的の他に、症状が出てこないように予防するために飲み続ける必要があるんです、高血圧や糖尿病の薬に似ていますね(Provide)。そう聞いてどう思いますか?(Elicit)>
Pt「あ~、でも飲み続けるのは嫌だな~」
過去記事にも情報提供のコツを紹介していました。