精神科OTのブログ(仮)

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アルコール使用障害の人が「飲んでません」と言った時にどう対応するか

アルコール使用障害の患者さんが「酒飲んでません」と言ったら、返す言葉は「辛くないですか?」です。これ、河本泰信先生が紹介している方法で、私はいつも意識して使っています。

 

アルコール使用障害、中でもDSM-Ⅳまでの診断では依存症とされるような比較的重度の患者さんの転帰は「安定断酒」「コントロールされた飲み方への回帰」「早死」の3つです。

 

患者さんは人生の中で何度か節酒や断酒を試みることがありますが、アルコールリハビリテーションプログラムを受けて退院した後、1年間の断酒率は3割程度というデータもあり、時間の経過とともにさらに低下するわけです。

 

まず、生涯にわたって断酒を達成できる患者さんの方が珍しいわけで、そのような意味でも断酒の達成を治療の目標として設定することのなんというかハードルの高さというものがわかります。

 

患者さんは断酒に挑戦しますが、失敗するほうが普通なわけです。だから、酒をやめている、やっぱり飲んじゃった、という短期的なことで一喜一憂しても仕方ない。かといって断酒に挑戦した患者さんに対して「きっと失敗しますよ」なんて勇気をくじいてもしょうがない。

 

そういえば以前も似たテーマで記事を書いていました。
ioriiba.hatenablog.com

 

ということで、アルコール使用障害の患者さんが「飲んでません」と言ったら「頑張ってますね」とか「この調子ですね」などと安易に励ましてはいけません。患者さんは「やめたい気持ち」と「飲みたい気持ち」が同居しているわけですから。

 

それで、冒頭でも紹介した「辛くないですか?」がかなり使える対応方法となります。

 

で、患者さんが「辛くない」と言ったら少し喜んであげてもいいかもしれませんが、まだ慎重になったほうがいいでしょう。辛さがなく酒をやめられているのはどうしてなのか、何が上手くいっているのか丁寧に聞くといいのではないでしょうか。

 

で、患者さんが「辛い」と言った時はかなり心配してあげたほうがいいです。その辛さを緩和する対処方法はとれているのかなど、丁寧に聞くといいのではないでしょうか。いずれにしても酒をやめる方向への励ましや説得は禁忌となります。

 

私も当初は「酒やめてる」っていう患者さんに「すごい、がんばってる」などという声かけをしていました。多くの患者さんは再飲酒するので、「ああ、あの時ちゃんと辛くないか聞いてあげればよかったな」と後悔しました。

 

今回は「飲んでません」と言う患者さんへの対応ですが、「飲んじゃいました」と言われたときの対応も河本先生が紹介する方法がめっちゃ使えるので今後シェアします。

 

リファレンスが見当たらないので、リライトした時に載せます。