ゲームするほど頭が良くなる!?
現在、「“ゲームをするほど頭が良くなる”という研究結果が出た」と、とある論文がたくさんのネット記事になって紹介されています。
https://www.nature.com/articles/s41598-022-11341-2
Googleで「ゲーム 知能」と検索すると上位5位くらいまでこの論文についての記事が出てきますね。
ブログなどやったことある人なら検索上位を獲得することの難しさがわかると思います。
そこで疑問。
論文は世界中で山ほど発表されるのに、なぜこの研究がわざわざ日本のネット記事で紹介されるの?しかも、こんなに大々的に…
発表しているのはいったいどんな研究者なの?
この研究の中心人物っぽいトルケル・クリンベリ氏についてほんの軽く調べてみたのですが、ちょっとWikipedia見ればわかるくらい、業界との関係が深い方のようです。
いくらなんでもわかりやす過ぎです。
2001年、ベンチャーキャピタルからの財政支援を受けたクリンベリ氏は自身の研究室でCOGMEDという認知トレーニングソフトを開発、及びマーケティングのため同名の会社を設立しました。
2010年、COGMEDは英国の大手出版会社であるPearson Educationが買収し、クリンベリ氏が所属するカロリンスカ研究所にも多額のロイヤルティが支払われた経緯もあるようです。
当時のクリンベリ氏による主張はざっくり言うと「ワーキングメモリを鍛えれば、他のいろんな知的能力も上がる」というもののようです。しかし、2012年、トップジャーナルに掲載された複数のレビューやメタアナリシスによってその主張は否定されています。
以上の顛末は2013年のThe NewYorkerの記事に詳しく載っていました。
https://www.newyorker.com/tech/annals-of-technology/brain-games-are-bogus
PubMedをさらっと眺めた感じでは、その後主だった論文発表は少ないものの、2021年は、「空間認知を高めると数学的能力が上がる」的な主張の論文をお弟子さんとともに発表しています。
大規模なRCTとか、いかにもお金がかかりそうな研究もあるので、その背景にも強力なバックアップがありそうな。
ちなみに、クリンベリ氏がエグゼクティブディレクターを務めているというCognition MattersというNPOのHPを開くと「恵まれない子供にタブレットを配るために寄付を!」みたいになります。
欧米では利害関係的にちょっとヤバいのがばれているのか、今後日本をマーケティングの標的にして、手始めに「ゲームすると頭良くなる」という研究結果をシェアしまくって地ならししている、というところでしょうか。
COGMEDの日本法人は今年になって、社名を「コグメドジャパン」から「ワ―キングメモリー」に変更したようです。今後の展開を見据えた動きなのでしょうか。