動機づけ面接はどこから来たか
〇〇療法のようなものは、特定の理論から演繹的に説明するものがあります。
例えば精神分析的精神療法というのはフロイトの発達理論で説明しますよね。作業療法の分野で、例えば感覚統合療法はエアーズの感覚統合理論で説明します。
説明から仮説的構成概念を排するという点で、上記とは全く異なりますが、行動療法は行動分析学をはじめとした学習理論で説明します。
動機づけ面接は特定の理論に拠らず、上手くいっている面接、結果を出している面接から有効成分と思われるものを抽出し、効果研究を繰り返して洗練させ、整理したものですから、開発の方法は帰納的でプラグマティックだと言えます。
ただ、動機づけ面接を開発したミラーは行動療法家で、その哲学的背景に徹底的行動主義があることは確かだと思います。
徹底的行動主義とは、行動の原因を個人の内部ではなく、個人と環境との相互作用に求めるという考え方です。また、人の心は行動の原因、つまり独立変数ではなく、説明されるべき行動、つまり従属変数として分析するべきだと考えています。
面接は話し手と聞き手の相互作用の連続です。
話し手の発話が従属変数で、聞き手の発話が独立変数とするならば、聞き手の発話の仕方を変えることで、話し手の言うことが変わるということです。
「酒飲んで死ねれば本望だ」
「病気じゃないんで薬は必要ありません」
このような発言も動機が無いから、病識が無いから言うのではなく、聞き手が言わせているんだ、と捉えることができます。
話し手が特定の行動変容に向かう発言(チェンジトーク)を一貫して引き出し、強めるために、聞き手が発話の仕方を工夫する、それが動機づけ面接だと言えます。