精神科OTのブログ(仮)

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精神科の作業療法士が知見や考えをシェアしています。

子供とステイホーム

ステイホームということで、子供と過ごす時間が増えたとか、家で過ごすからストレスとか、そういう話題が多いですよね。

 

昨年4月からの緊急事態宣言とそれに伴うステイホームのことを思い出したので書いていこうと思います。

 

うちは5歳の長女と1歳の次女がいます。

 

次女に関しては、産後半年で仕事復帰した奥さんと交代し、私も育児休業をとり、家事育児に専念していました。

 

昨年4月に保育所へ入れると同時に仕事復帰する予定が、緊急事態宣言のため家庭保育の要請となりました。

 

育休を延長し、長女も含めた3人で過ごした2か月間は私にとって、人生で一番たいへんだったと思える日々でした。

 

 

~工夫したこと~

一日の過ごし方をスケジューリングし、できるだけその通りに行動しました。

 

これは、主に長女との生活を考えて決めました。食事や歯磨き、トイレなどのADL(日常生活活動)にとにかく時間がかかるので、スケジュール表を壁に貼り、今何をする時間なのかをわかるようにしました。

 

ADLの他に、1日1回の外出の時間や長女の遊びの相手だけをする時間も設けてスケジューリングしました。

 

スケジュールは勝手に決めるのではなく、長女にも意見を聞きながら作成し、貼る場所も決めてもらいました。

 

 

~大変だったこと~

食事の準備は大変でした。

 

私は朝が苦手だし、自分が食べないので朝食は奥さんが準備してくれます。

 

昼食はそれまで次女の離乳食だけ作れば、自分はカップラーメンでも良かったのですが、長女がいるとそういうわけにいきません。

 

長女もカップラーメンの方が喜ぶので、たまにカップラーメンにしますが、さすがに毎日カップラーメンというわけにはいきません。

 

昼の離乳食と普通の食事、夜の離乳食と普通の食事、計4回食事の準備をしている感覚になるので、大変でした。

 

 

~辛かったこと~

どうしてもイライラが募るので、長女に対しては大きな声で怒ってしまうことがあり、後悔したり、それでもまた怒ってしまうのが辛かったです。

 

次女を昼寝させてる時に長女がゴチャゴチャ絡んできて、物音に敏感な次女がすぐ起きてしまうこと。

せっかく作ったご飯を食べないこと。

この2つが2大イライラポイントでした。

 

精神科の作業療法士ですから、ペアレントレーニングも多少理解していますし、何なら指導する立場なのですが、自分の子育てでは感情が先走ってしまいますから、なかなか活かせませんでした。

 

それで、なおさら自信を無くし辛かったです。

 

 

~良かったこと~

その当時の長女は鳥が好きになり始めていたので、一日一回の外出の時間には車に乗って田んぼや山に出かけ(密を避けていた)、野鳥を観察しにいくことが定番になっていました。

 

野鳥の観察ポイントを発掘したり、珍しい鳥を見つけたり、楽しむことができました。

 

今も鳥好きは続いていて、図書館でいつも鳥の本を借り、鳥の絵を描いて、お友達にも「鳥博士」って呼ばれているので、良かったなと思っています。

 

 

思い出すだけでも辛いステイホーム生活でしたが、自分のスキルアップ、経験値という面でも良い面もあったかもしれません。

 

 

 

 

 

 

患者さんからフィードバックを受ける

Adherence Therapyの中核スキルとしてElicit and respond to feedbackを紹介してみました。

 

ioriiba.hatenablog.com

 

これと非常に似ていて、ほとんど同じなのかなと思ったけど、やっぱり微妙に違うものを見つけたので紹介します。

 

2000年代初頭から、心理療法のコモンファクター研究が進められてきています。

 

コモンファクター研究とは、いろんな種類の心理療法があるけれど、実際の有効成分って重なるものが多いんじゃないの?同じ○○療法を標榜していても、患者さんをちゃんと治せる上手い治療者もいれば、そうじゃない治療者もいる、その差ってなんですか?

 

ということに関する研究です。

 

実証的に効果ありとされるコモンファクターとして、共感性や治療ゴールへのコンセンサス、集団療法における凝集性など、いろいろ挙げられています。

 

中でも私がよくわからなかったのが、Collecting and delivering client feedbackだったのですが、詳しい人にたずねたところ、セッションそのものに対してクライエントからフィードバックをもらうことで、治療の進め方を適宜修正していくという概念らしいです。

 

その一つの方法としてRoutine Outcome Monitoring(ROM)というものがあるようです。

 

ROMと言えば、リハビリ界隈では関節可動域ですけどね。

 

ROMはセッションの終了時に患者さんに今日のセッションがどうだったかたずねたり、質問紙に記入してもらい、そのフィードバックを次回に活かしていくような取り組みを指すようです。

 

私の場合、面接が主な援助手段というわけでないので、あまり関係ないかなと思いつつ、セッションを重ねていくタイプの治療に、都度患者さんからの直接のフィードバックを反映させていく取り組みは協働的だし、有効とされる理由はわかるような気がします。

 

作業療法でも理学療法でも、場面によっては使えるかもしれませんね。

 

「今日はこんな感じでやらせてもらいましたけど、どうでした?」みたいに聞くだけでもいいかもしれませんね。

 

 

心理教育のコツ~患者さんからのフィードバック~

Adherence Therapyのマニュアルを見ていくシリーズです。久しぶりです。

 

というのも、今日のテーマは私自身があまり噛み砕けなかったので勉強が必要でした。

 

INTERPERSONAL SKILLS

  • Use the patient's words
  • Open ended questions
  • Reflective listening
  • Summarising
  •  Elicit and respond to feedback

 

今日はElicit and respond to feedbackについて。

 

患者さんからのフィードバックを引き出し、それに応えるということです。

 

とりあえずマニュアルから直訳すると、

「セッションを通して、治療者は患者からの口頭および非言語のフィードバックを引き出し、対応するように努めなければならない。例えば、患者が正しく理解しているかどうかを定期的に確認し、セッションから得られたことについて患者に質問し、面談の最後にセッションの要点を正確にまとめておく」

とあります。

 

要するに、扱ったテーマに関して、共感(患者さんの理解、考え、感情を正確に知ろうとする)に努めるってことかなと理解しました。

 

そのために、聞き返しだけでなく、質問、サマライズも総合的に使うと。

 

~非言語のフィードバックに対応~

患者さんの態度や表情をモニタリングして何か感じたら、そこに聞き返すことができますね、例えば、

「少し難しそうな顔をされましたね、ずっと薬を飲むってことに引っかかってるんですね」

 

~理解度の確認~

わかりましたか?、わからないところありました?と閉じた質問をするよりは、

「今お伝えしたことを○○さんなりの表現で言ってもらえますか?」

などもありかと思います。

 

~セッションの要点を確認~

これはサマライズの形になることが多そうです、マニュアル内にある発話例を改変しちゃいます、

「今日のお話まとめると、薬をずっと飲むのは嫌だということですね、薬の力を借りなければいけない自分が弱い存在に感じると、一方で、薬の必要性については元々よくわかっているということですね、それで合ってますか?」

 

あるいは、患者さんに委ねるのも良いかなと、

「今日のお話、○○さんなりにまとめるとどういうことでしょう?」

 

 

ioriiba.hatenablog.com

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聞き返しを身につけて良かったこと

動機づけ面接の中核的な技法である聞き返しですが、練習し始めた時はとても難しく感じました。

 

でも、身につけて良かったことがあります。

 

患者さんや同僚と話す機会がある度に聞き返しの練習をしていたのですが、けっこう不自然で変なしゃべり方になっていたと思います。

 

練習を重ねると、患者さんの発言の奥にあるもの、何を言いたいのか想像して返す、複雑な聞き返しが少しずつできてきました。

 

ある日、長期入院になっていた患者さんのケア会議がありました。

 

その患者さんの発言は、支離滅裂で、荒唐無稽で非現実的な将来の夢を語っているようでした。参加者は皆、「またその話か・・」とうなだれています。

 

Aさんの発言の断片を頭の中で集め、発言の背景を想像してみました。

 

「Aさんはこの先の生活、特に経済面を心配してるんですね、お父さんも年だし、自分の力で生活していかなきゃって思ってる、だから収入の手段が欲しいんですね、それで○○とか、△△とかやりたいって言ってるんですね」

 

なんだかこの聞き返しがとても当たったようで、「そうなんですよ!、あなたわかってますね!」って喜んでくれました。

 

それで、退院前訪問に行った時、Aさんはお父さんに私のことをこのように紹介してくれました。

 

「自分は精神障害者だから、自分の言いたいことをうまく言えないんだけど、~~さんは通訳してくれるんだよ、障がい者の通訳みたいな人なんだよ」

 

動機づけ面接の勉強をして、聞き返しを身につけて良かったな、と思える瞬間でした。

 

思路障害のある患者さんはA→B→C→Dと論理的に話すことが難しくなっています。

 

A→Dになったり、いきなりDだけ言ったりするため、支離滅裂とされてしまいます。

 

複雑な聞き返しの技術は抜けちゃっているBやCを補う役割を果たすため、重度の精神障害を持つ方とのコミュニケーションに役立つと考えます。

 

 

動機づけ面接の存在価値は何か

動機づけ面接の話題で連投になりそうですが、今はそれが楽しいから良いかなと思っています。

 

今日は同僚にわからないことを質問したり、対話する時間を持ちました。

 

力動的精神療法と精神分析がどう違うのか質問したり、患者さんとの「関係性」という言葉をお互いに使うけれども、ニュアンスが違うような気がするのだが、それはいったいなんだ?

 といった話題になり、それはそれで有意義なものでした。

 

彼が持ち出してくれた疑問は、動機づけ面接は関わるプロセスが土台になっているというが、そもそも良い関係性があれば、患者さんは自ずと良い方向に向かうのではないか、変化に向かう発言(チェンジトーク)を引き出すプロセスが必須成分と言えるのか、というものでした。

 

確かにその通りだと思いました。というのも、動機づけ面接の半分はロジャースの来談者中心療法でできているからです。

 

ロジャースは無批判に受容的共感的に聴くことで、患者さんは自ずと問題を改善していくと考え、性善説に立っている人です。

 

それを究極的に言えば、動機づけ面接らしさを形作る目標志向的要素、つまり変化に向かう発言を引き出し、強める技術というのは・・・・・、別に必要ないんですよね。

 

そこにあえて動機づけ面接の存在価値を見出すとすれば、それはコスパなんじゃないかなって私は思います。

 

患者さんはいつか、自らの問題を自分で解決していくと信じたとしましょう。その道のりは時間がかかるかもしれないし、治療者が余計なことをして邪魔してしまうかもしれません。

 

動機づけ面接は、患者さんが自ずと良くなっていくプロセスを、邪魔しない技術(来談者中心的要素)と、目的地に早道できるようにガイドする技術(目標志向的要素)から成り立っているよ、と言い換えることもできそうです。

 

 

 

 

「解釈」と「聞き返し」

今日も楽しい動機づけ面接ミニ勉強会でした。

 

今日のテーマは中核技術の聞き返しでした。

 

動機づけ面接第3版の中には、「聞き返しの技能は力動的精神療法における解釈のタイミングと似ていないこともない」とあります。

 

私はこの種の心理療法について何もわからないので、どの辺が似ているのかわかりませんでした。

 

そこで精神分析に詳しい同僚に、聞き返しと解釈の似ている点と違う点についてたずねてみました。

 

そもそもなんですが、力動的精神療法と精神分析ってだいたい同じものを指しているのかと思っていたのですが、まあまあ違うらしく、バスケとサッカーくらいの違いはあるそうです。知らなくてごめんなさい。

 

なので、精神分析の解釈と動機づけ面接の聞き返しの違いについて思うところを教えてもらいました。

 

彼によれば、どちらも共感を含み、話し手の自己理解を深めるという点では似ているのかな、とのこと。

 

一方、違う点として、①解釈は無意識という深いレベルについて言及するが、動機づけ面接の聞き返しは行動や出来事、あるいは比較的表層(前意識くらい?)にある考えに対するものなので、その深さという点で違うのではないか、とのこと。

 

また、②解釈というのは話し手の話を十分に聞き、聞き手の中での解釈が完全にまとまった段階で伝えるものであり、その繰り出し方も違うとのこと。

 

まあまあ、違うのかな・・・、特に②はけっこう違いますね。細かい技術の違いという以前に、面接における話し手の発話行動の捉え方自体が元から違う感じですね。こちらは過去記事へ。


ioriiba.hatenablog.com

 

 

 

①に関して言えば、動機づけ面接の聞き返しにも深さという軸があり、相手の言ったことを繰り返す単純な聞き返しよりも、相手の発言の奥にあるものへ言及する複雑な聞き返しの方が深いと考えます。

 

さらに、複雑な聞き返しの中でも、状況や出来事という観察可能なものへの聞き返しよりも、感情や価値観という目には見えないものへの聞き返しの方がより深いと考えます。

 

深さの次元が違うよ、無意識の方がもっと深いよ、と言われれば、まあそうなのかもしれないし、私自身が勉強不足な以上、議論はしにくいですね。

 

ただ、動機づけ面接を他の専門職の人に教えるなら、その人の背景や哲学を尊重することが大事かなと思います。

 

同じ言葉でも使い方や意味が違っていることもあるので注意が必要ということもあります。

 

教える立場だからといって自分の考えややり方を押し付けることなく、協働的に、自分も学ばせてもらうという姿勢をこれからも大事にしたいと思いました。

 

 

最近の楽しみ

先日、職場内での動機づけ面接ミニ勉強会の日でした。

 

私にとってはトレーナーとしての経験を積むためのチャンスでもあり、毎回、準備段階からとても楽しみにしています。

 

集まってくれるのは皆ベテランの同僚の人たち、貴重な時間をどう有効に使うかいつも考えています。

 

また、当たり前ですが、学習段階も、動機づけ面接を勉強する動機の高さも一人一人違っています。

 

それらをモニターしながら、参加者の満足度ができるだけ高まるように、次回も来たいと思ってもらえるようにしていきたいと思っています。

 

今回の構成は、

・先日まで取り組んだ事例の報告(良い変化がもたらされた!)

・初心者の人が面接者となり、通常の面接とマニュアルに沿った動機づけ面接の2通りをリアルプレイ&録音

・録音を聞きながら皆でコード化

・2つの面接の違いについてディスカッション

・今後の学習の展開について相談

という流れでした。

 

今回私にとって良かったことは、今後の学習の展開について方向性を確認できたことです。

 

皆さん、自分が担当する難しい患者さん、変化に抵抗する患者さんへの対応に突破口を見出したい、そのために動機づけ面接が役立つなら使いたい、その点が共通しているということが再確認できました。

 

私はついつい動機づけ面接がどのような面接なのかを教え込もうとしてしまいますが、それは教科書にも書いてあることだし、どのような捉え方をするかは個人の自由です。

 

それよりも、ニーズに合わせて具体的なスキルを提示し、体験していく、患者さんへの対応にも使ってみてもらう、ということが当面の方針になりそうです。

 

トレーナーの役割は、参加者が自ら学ぶ動機を高め、学習のサイクルが回るように援助していくこと、とも言えそうです。

 

私自身、楽しみながら修行を続けていこうと思います